失うことなど、怖くなかった。

何故なら、失うものなど俺には存在しなかったから。


あるのは、下らないモノばかり。


“失いたくないもの”

など、

あるワケも無いし、欲しいとも思わない


寧ろ…





そんなモノ、この世に存在しなくてもいいと思った










My desire for... ― 温もり ―










「生徒会長室…結構綺麗ね」

「アーン?当たり前だろ。
 因みに此処は会長、副会長専用だ」

「…誰が決めたの?」

「俺様に決まってんだろ」

「……ふふ、行動が早いのね?」



此処はきっと、私たちの行為に最も多く使われる場所なのだろう

互いに想いは無いとは言え恋人はいるし、他の生徒に見られてはいけない。

勿論教師にも。

…ちなみに、学校以外で会うつもりは毛頭無いのだ  お互いに。

だから、校内で見つからない場所。


鍵もありその鍵も生徒会長が管理するこの生徒会長室ほど、適した場所は無いのだ





「…早速?」

「ああ」

「飢えてるの?」

「まさか」

「まぁ、いいわ」



跡部の頬を撫ぜ、私から口付ける。

彼の舌が動かないところを見ると、


( …私から、ってことね… )


今までの男は、私からせずとも勝手に入れてきたし、行為も…

…やはりこの男は、他の奴とは違う。


一緒にいて、心地良い。


( 似てるから かしらね… )


舌を侵入させ、彼のそれと絡める

そこでやっと、彼は動いた。


唇を繋げたままソファにゆっくりと倒され、私は跡部の首に手を回し、その快感に酔いしれた



ああ、心地良い。









































「( 似てるのかしらね、私たち―― )」


愚問。

俺の脳内に思い浮かんだのは、その言葉だったけれど。



「( 俺たちはただ似てるんじゃねぇ…似過ぎてるんだ。 )」



彼女はそれだけは読み取れなかったのか、そのまま顔を背けた





俺の中にある感情は


楽しいという想いと、

快楽への欲と、


彼女を離したくないという、何故だか分からない独占欲  だった。


唇を合わせる度に

身体を重ねる度に



今まで無かった温もりが 帯びてゆくような気がした。



コイツは気付いていないのか

俺たちは似すぎていて、

違うのは


ソレを求めているのと、否定しているということだけだということを




















「…どこいくの?景吾」



一糸纏わぬ姿でシーツだけを体に掛け、少しダルそうにソファに寝転びながらは俺に尋ねた

最後のボタンを掛けると、振り返り  生徒会長室の鍵を投げる



「部活だ。」

「…ああ、部長さんだもんね」

「そういえば…お前の彼氏、アイツはテニス部か?」

「…そうだったと思うけど。平部員だけどね」

「そうか。ならソイツに会うってことでテニスコートに来い。その時に鍵を返せ」

「りょーかい」

「…じゃあな」



パタン。


無機質に閉じられた扉を見つめ、誰にも聞かれること無く溜息を吐いた



「…つめ、たい」


シーツを握り締め、呟いた


今まで此処に 確かに温もりがあったのに。



「景吾…」








































ど う し て こ の と き 景 吾 の 名 前 を 呟 い た か な ん て 、 私 に 知 る 術 な ど な か っ た け れ ど






















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( 06,08,07 ) ( お前ら恋人を何だと思ってんだ )( アンタが書いてるんだよ )